2012年03月01日

セルフケア:24のアプローチ

同僚の串崎先生から,新著『セルフケア:24のアプローチ』(風間書房)をいただきました。続けざまに,本を出版されているので,その速筆ぶりには本当に驚かされます。

「セルフケア」とあるので,広くはセルフヘルプの本(自助本)という位置づけになるかと思いますが,特徴的なのは,それぞれのアプローチごとに,海外の一流誌の最先端の基礎研究がいくつも紹介されている点です。エピローグで,方法の紹介ではなく,「セルフケアをとおして心理学を学ぶという感じ」になったと書かれてありますが,まさにそのような印象をもちました。

きわめて平易に書かれていますが,これは技術ではなく,学問の本なんだと思いました。心理療法は,技術としてではなく,学問として取り上げなければ,臨床心理「学」にはならないと思っていますが,そういう意味で,この本が「セルフケア心理学」と呼ばれるのは納得です。私の臨床心理学の授業の教科書にしてもよかったです。

海外では,最先端の研究が本にまとまるまでに数年,そして,それが日本語に翻訳されるまでに,だいたい10年かかるので,日本の心理学は10年以上遅れていると言われますが,この本では,去年出たばかりのまさに最先端の研究が紹介されています。本邦初はもちろん,海外でも本で紹介されているものは少ないのではないでしょうか。

さて,この本は,5つのセクションからなり,それぞれのなかに,4〜6つのアプローチが書かれてあります。セクションの1と2の違いは,いまいちよくわからないので,セクションはいっそのこと無視して,好きなところから読み始めてもよいように思います。

セクション1は,「お気に入りの場所に行く」から始まり,「からだを温める」「深呼吸する」「おいしいものを食べる」といったアプローチが紹介されています。「お気に入りの場所に行く」から始まるのは意外でしたが,読んでみたら,「自分が安心できる人がいるところに行く」ということでしょうか。アタッチメントをベースにしているため,これが最初に来たのでしょうか。どこかに行く,というのは労力を伴うことなので,なぜこれが最初にあるのか疑問に思いました(実際に行かずに想像するだけでもよいとは書いてありますが)。今度,聞いてみましょう。

米軍は,戦場などで,圧倒されるようなストレスを体験した兵士に対して,PTSD予防のために,まず何をすると思いますか? 戦場に盛んに兵を送り出しているアメリカは,積み重ねてきた現場の経験があるうえに,心理学先進国なので,膨大な臨床知見と研究成果もあります。それを踏まえて,一体何をするのかというと,まず温かい食事を与えて,安心して休める場所を提供するというのです。冷たい缶詰ではだめなんですね。やはり温かくておいしい食事が第一です。

しかし,普段から温かくておいしい食事を食べていて,誰にも襲われないところで安心して睡眠を取ることができる多くの人は,何が第一なんでしょうね・・・。すごくおいしい大好きな料理とか?
posted by Dr. Sugamura at 05:14| 大阪 ☁| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月28日

本日の論文

今日はまず,Systems Research and Behavioral Scienceの2012年2月号から。このジャーナルには,前から投稿しようと思っていて,論文もほとんど書いているのですが,最後の仕上げが面倒で,ずっと棚上げになっています。

Operational Closure and Self-Reference: On the Logic of Organizational Change
作動的閉鎖性と自己言及性。オートポイエーシスのキーワードですね。質的・量的の両方というところも構成主義的です。

続いて,Psychological Scienceから。

Military Training and Personality Trait Development:
Does the Military Make the Man, or Does the Man Make the Military?

軍隊で訓練を受けた人は,表情フィードバックの操作に反応しにくいという研究もかつてありましたが,パーソナリティも変わりますか。軍隊のトレーニングが長期にわたってパーソナリティに影響するというのは,何となく納得できますが,Agreeablenessが低くなるというのは少しびっくりです。Agreeablenessは,協調性,調和性などと訳されていますが,協力するとか,他の人とうまくやっていくというのは,軍隊で求められる要件ではないかと思うからです。ですが,実はこの因子には,気が長い,温和な,怒りっぽくないといった項目が多くあるので,それを考えると,うなずけます。米軍の訓練では,Kill, kill, killと言いながら,ひらすら殺すことを徹底的に訓練するので,軍隊的には,気が長くて温和だと困るということなのでしょう。

話題がすっかり暗くなってしまったので,次回は,平和心理学の雑誌からピックアップしたいところですが,あまりよい論文を見かけません。
ラベル:論文
posted by Dr. Sugamura at 12:33| 大阪 ☀| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月27日

本日の論文

登録している雑誌の目次が頻繁にメールで届きますが,どんどん溜まっていくので,備忘録的に,面白そうなものはブログにアップしておくことにしました。

まずは,Psychoneuroendocrinologyの2012年4月号から。
- Effects of intranasal oxytocin and vasopressin on cooperative behavior and associated brain activity in men
- Intranasal oxytocin enhances emotion recognition from dynamic facial expressions and leaves eye-gaze unaffected
- Low CSF oxytocin reflects high intent in suicide attempters
- Effects of intranasal oxytocin on social anxiety in males with fragile X syndrome
オキシトシン流行っていますね。

続いて,International Journal of Psychophysiologyの2012年2月号から。
- Agency, gait and self-consciousness
- Predicting the future: From implicit learning to consolidation
- Anticipating the future: Automatic prediction failures in schizophrenia
構成主義のキーワードばかりです。

続いては,American PsychologistのOnline First Publicatiionsから。
- Intelligence: New findings and theoretical developments
ニスベットはこんなこともやってたんですか。これは勉強になりそうです。

続いて,JPSPのOFPから。
- Cultural differences in self- and other-evaluations and well-being: A study of European and Asian Canadians
ある程度,予測つきますが,おもしろい結果ですね。

- The dark side of creativity: Original thinkers can be more dishonest
おもしろい「ネガティブ・スピン」(ポジティブなものがもつネガティブな側面に着目するという構成主義の用語)ですね。

- Culture and the body: East–west differences in visceral perception
これは早く読みたいです。
ラベル:論文
posted by Dr. Sugamura at 00:53| 大阪 ☁| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする