2012年01月06日

AbstractはConcreteであるべし

論文(フルペーパー)には,その要約がついていることが一般的です。英語では,abstractやsummaryを指しますが,心理学ではabstractと書かれていることが多いです。

abstractとは,抽象的なもの,つまり具体的でないもの,と理解している人がいますが,必ずしもそうではありません。特に,学生に論文の要約を書かせると,どのような結果が得られたのかという肝心な点が書かれておらず,具体的でないばかりか,漠然とした内容になっていることがありますが,それはabstractとしては不十分です。

もちろん,抽象の対義語が具体であり,日本語の類義語辞典には,抽象は「あいまい」「はっきりしない」という意味があります。しかし,abstractには,「抽出する」「抜粋する」という意味があります。英語の論文を読んでいると,abstractに書かれてあるのと同じ文章が,本文中に出てくることがわりとありますが,そういう言葉の理解の仕方の違いが背景にあるのでしょう。

十分なabstractとは,論文の目的,方法,結果,考察までを端的かつ具体的にまとめたものです。なので,abstractはconcreteに書く必要があるのです。

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と,学部の授業では,つねづね言っているわけですが,最近,ある論文のabstractを読んで,思わず笑ってしまいました。

いうまでもなく,このような総説,展望論文の類は,科学論文ではないので,目的・方法・結果・考察という書き方ができないわけですが,それでも,可能な限り具体的に内容を書くのが望ましいとされています。

にもかかわらず,あえて曖昧にする,もったいぶった書き方が,逆にいいですね。しかも,abstractの書き方を指導する立場にあるAPAの雑誌で,というのがミソです。

まあ,伏せられている人物というのは,言わずもがなのアノ人のことでしょうが・・・。
posted by Dr. Sugamura at 13:28| 大阪 ☀| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする